「狐の嫁入り」について

前回の記事とはまるっと内容が変わりますが「狐の嫁入り」について書きます。

 

晴れているのに雨が降っているという、子供のころは不思議でたまらなかったお天気雨。これは雨粒が地面に到達するまでに雨雲が消滅或るいは移動した時に起こる現象だそうです。この天気雨は「狐の嫁入り」とも言われています。

狐の嫁入り」は天気雨の他に遠くの山野に狐火が連なる怪現象のことを指し、その連なる狐火が嫁入り行列を迎える調印行列に見えたことから「狐の嫁入り」と呼んだそうです。

ちなみに嫁入り行列とは昭和中期ごろまでにあった風習で、当時は今のように結婚式場で挙式するのではなく、花嫁が嫁入り道具を持って仲人や両親らと共に嫁ぎ先に向かう形式で、それを花婿の家が提灯行列で迎えるというスタイルだったそうです。そして、花嫁が嫁ぎ先の家の敷居を跨いでから祝宴が行われたそうです。

 

さて、「狐の嫁入り」と言われている天気雨についてですが、これは狐に化かされている、または狐が自分たちの嫁入り行列を人目につかせないようにするために雨を降らせたと伝えられています。めでたい日にも関わらず涙をこぼす花嫁もいるだろうから晴れの日に降る雨をこう呼んだとも言われています。

 

晴れているのに雨が降っているというただでさえ奇妙な現象なのにその由来も少々不気味ですが、「狐の嫁入り」は縁起の良いものとされています。昔話などでは人を化かしたり、九尾の狐の話に見られるように悪さばかりするイメージがありますが、狐は稲荷神の使いともされています。稲荷神は稲の神様で五穀豊穣の祈願をされていました。そんな神様の使いとされているためなのか、「狐の嫁入り」は豊作の吉兆と言われていたようです。

 

この他に「狐の嫁入り」の由来の一つにこのような話があります。

愛した男のために生け贄になった狐

むかし、日照りに悩まされている村があり、雨乞いの生け贄として狐を捧げようということになり、村の若者に女性に化けた狐を騙させるように仕向けた。若者のもとに嫁入りしてきたところを捕らえて生け贄に捧げるという算段だったのだ。しかし、若者と狐はいつしか本当に惹かれ合い、若者は狐を騙し続けることができず本当のことを話し、狐を逃がそうとする。しかし、狐は逃げることはせずに愛した若者のために敢えて嫁入りし、当初の計画通りに村人たちに捕らえられ、雨乞いの生け贄として捧げられてしまう。その時に晴れているにもかかわらず雨が降り始めた。それはまるで嫁入りした狐が泣いているかのようだったという。

 

…この若者と狐の悲恋の話が「狐の嫁入り」の由来となったと言われています。「狐の嫁入り」にまつわる伝承は各地にあり、我が地元の埼玉にも「狐の嫁入り」にまつわる民話があります。地方によっては天気雨ではなく、虹がかかることや霰が降ることを「狐の嫁入り」と呼ぶそうですよ。地方によっては「狐の嫁入り」ではなく「嫁とり」「狐雨」「祝言」など異なる名称で呼ばれているようです。北陸から関西地方には「狸の嫁入り」というものがあり、これは晴れているのに雪が降る現象をこう呼ぶのだそうです。